6月24日(水)、プロクラ鈴鹿にて「となりのAI」を開催しました。
毎回、台本を用意してスライドも作って臨みます。でも、白状すると——その通りに進んだことが、一度もありません。
今日はそんな「となりのAI」の様子をレポートします。
台本は、あくまで保険
準備をしないわけではありません。むしろ毎回しっかり台本を書き、スライドも作ります。話の筋道を自分の中で固めておくためです。
でも実際にその場が始まると、参加者の質問や「こういうことがやりたい」という声が出てきます。そうなったら、迷わずそちらに大きく時間を割きます。用意したスライドを最後まで消化することより、目の前の人が知りたいことに答える方がずっと大事だからです。
今回も例外ではなく、当初の予定にはなかったRPA(業務自動化ツール)やAIエージェントの話にも踏み込みました。参加者の関心がそこにあったからです。
こうして対話しながら、その人に合わせて自分の知見をお渡しできる——それが「となりのAI」という場だと、改めて思っています。
まず押さえたい「AIはなぜ嘘をつくのか」
脱線はするものの、毎回どうしても外せない土台があります。ハルシネーション(もっともらしい嘘)はなぜ起こるのか、という話です。
AIの正体は、高度な人格ではなく**「文字の組み合わせ機械」**です。入力された問いに対して、「次に来そうな文字」を統計的な確率で予想しているだけ。たとえば「今日は」と入れたら、「晴れ」が80%、「暑い」が10%……とミリ秒単位で計算して、もっともらしい文章を紡いでいるにすぎません。
ここに「事実を検証する」という機能はありません。だから、データに存在しない情報や曖昧な問いに対しても、AIは平然と——真顔で——文法的に正しい嘘を出力します。これがハルシネーションの正体です。
特に苦手なのが次のような領域です。
- 数字(計算):数字を「意味」ではなく「文字」として扱うため、計算ミスをしやすい
- 日付・曜日:「次の日曜日」と聞くと、日付と曜日がズレた答えを平気で返す
- 地域限定・ニッチな情報:たとえば鈴鹿のローカルな店舗情報のように、ネット上に蓄積が少ない情報は、確率が働かず捏造が起きやすい
「AIは万能な回答者ではなく、確率で言葉を並べる推論エンジン」。この認識を持つだけで、付き合い方が変わります。
プロンプトの型を整えても、嘘は消えない
次に話すのが、プロンプト(指示文)の大切さです。精度を上げるコツはシンプルで、
- 役割を持たせる:「あなたは優秀な広報担当です」
- 目的を明確にする:「Instagramの告知用に」
- 回答フォーマットを指定する:文字数・トーン・絵文字の有無まで条件を決める
これだけでアウトプットのブレはぐっと減ります。
ただ——ここが肝心なのですが——プロンプトをどれだけ整えても、嘘が完全になくなるわけではありません。 なぜなら、AIはインターネット上の膨大な情報の中から「それっぽいもの」を探してきているからです。参照する世界が広すぎる限り、ハルシネーションの芽は残り続けます。
ソースを「限定」する——RAGとNotebookLM
では、どうするか。答えは、AIに自由に答えさせるのをやめて、参照範囲を特定の「情報元(ソース)」だけに限定することです。
この仕組みをRAG(検索拡張生成)と呼びます。そして、それをプログラミングなしで実現できるのが、GoogleのNotebookLMです。
NotebookLMは、こちらが渡したファイルやWebサイトの中だけを見て答えます。用意した「確かな情報源」に世界を閉じ込めるので、嘘が劇的に減る。さらにすごいのが、回答の根拠となった箇所をリンクで示してくれること(グラウンディング機能)。「どこに書いてあるか」をAI自身が証明してくれるので、裏取りの手間が激減します。
ひとつだけ使い分けの注意があります。NotebookLMが力を発揮するのは**「調べる・確認する」場面。一方、ゼロから何かを生み出す「創造する」**場面は、ChatGPTやClaudeのような汎用AIが得意です。目的に合わせて道具を選ぶ。ここが意外と分かれ目になります。
今回の脱線:RPAとAIエージェント
ここまでが「いつもの土台」。今回はここから、参加者の関心に引っ張られてRPAとAIエージェントの話に広がりました。
「人がやっている定型作業を、どこまで機械に任せられるのか」。NotebookLMで“調べる”精度を担保した上で、その先の“動かす・つなぐ”をどう設計するか——という流れは、実は今日の本筋ときれいに地続きでした。脱線に見えて、参加者にとっては一番知りたかったところだったのだと思います。
どれだけAIやRPAが進化しても、「自分が何をしたいか」「どんな仕事の仕方をしたいか」を決めるのは人間です。その意図を言葉で整理できる人が、新しい道具を一番うまく使えます。
「となりのAI」という場について

大きな会場で完成された講演を聞くのも、もちろん価値があります。でも私がやりたいのは、わからないことをその場で聞けて、その人のやりたいことに合わせて話が転がっていく空気感です。
参加者とやり取りしながら、その人に必要な知見をお渡しできる。それが「となりのAI」だと思っています。
少人数で、対話しながら。次回もまた、台本どおりには進まないはずです。それを楽しみに、お待ちしています。
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