はじめに:山の次は、海へ
2026年8月1日(金)・2日(土)の2日間、福井県の若狭湾で「ゲームじゃないサバイバルモード 夏の海編」を開催しました。参加してくれたのは、小学1年生から中学1年生までの子どもたちです。
普段はプロクラ鈴鹿校のパソコンの前で、マインクラフトの中を器用に生き抜いている子どもたちです。その子たちに、本物の海で2日間を過ごしてもらいました。
※1週間前には三重県菰野町の朝明渓谷で「夏の山編」も開催しています。

【1日目】日本海は、こんなに透明だった
渋滞込みで3時間半、たどり着いた先は
朝、プロクラ鈴鹿校を出発。若狭湾までは通常でも3時間弱かかりますが、この日は渋滞にはまり、3時間半。到着したのは10時半ごろでした。

長い移動です。ただ、この「遠くまで来た」という感覚も、実はけっこう大事だと思っています。近所の川や海では味わえない、県をまたいで日本海側まで抜けてきたという実感。車の窓の外の景色が、山を越えるにつれてだんだん変わっていく。それを眺めている時間そのものが、旅の一部です。
到着後はまず準備をして、ラジオ体操から。長い時間車に座っていた体をいきなり水に入れるのは、実はあまり良くありません。まず体を起こして、それから海へ向かいます。

太平洋と、日本海の違い
海に入ってまず全員が言ったのが、「水がきれい」でした。
私たちが普段親しんでいるのは伊勢湾や太平洋側の海です。それに比べて若狭湾は、透明度がはっきりと高い。足元を見れば、水の中の石がそのまま見えます。腰まで浸かっても自分のつま先が見える海というのは、三重県の子どもたちにとってはなかなか新鮮な光景だったようです。
同じ「海」という言葉でひとくくりにしているものが、場所を変えるとこれだけ違う。地図の上では同じ青色に塗られていても、行ってみないと分からないことがある、ということなのかもしれません。


砂浜ではなく、じゃり浜
もうひとつ、想像と違ったのが浜の様子です。今回の浜は砂浜ではなく、じゃり浜でした。
これがなかなか手強い。裸足で歩くと足の裏が痛く、走ろうとすると石が動いて踏ん張りが効きません。「砂浜のほうが歩きやすい」と気づくのは、じゃり浜を歩いてみて初めてのことです。歩きにくさというのも、立派な体験だと思っています。
そして、じゃり浜には砂浜にはない楽しみがありました。石の種類が豊富なのです。
石の名前を、その場で教わる
今回のキャンプには、地学に知見のある兼松先生が同行してくださいました。
子どもたちが拾ってきた石を「これ何?」と持っていくと、その場で答えが返ってきます。チャート、花崗岩、砂岩——名前がつくと、ただの石ころが急に別のものに見えてきます。
面白かったのは、一度名前を知ると、子どもたちが自分から探し始めることでした。「さっきのチャートと同じやつ見つけた」「これは違う、白いつぶつぶがある」。分類する目が育つと、同じ浜がまったく違う遊び場になります。図鑑を持ち歩かなくても、その場で聞ける人がいるというのは、本当に贅沢なことだと思いました。
シーグラスも豊富でした。割れたガラスが波にもまれて角が取れ、すりガラスのような質感になったものです。色によって見つかりやすさが違い、白や茶色は多く、青や赤はなかなか出てきません。宝探しのようなもので、しゃがみ込んだまま動かなくなる子が続出しました。


お昼は焼きおにぎりと流しそうめん
昼食は焼きおにぎりと流しそうめん。暑い中で体を動かした後なので、しっかり食べて、しっかり水分を取ってもらう時間です。
流しそうめんは、やはり盛り上がります。同じそうめんでも、流すとなぜか美味しく感じるから不思議なものです。


SUPは、立つまでが難しい
午後は、もう一度海へ。ここで登場したのが今回の目玉、**SUP(スタンドアップパドルボード)**です。
大きなボードの上に立ち、パドルを漕いで進む——文字にすると簡単そうなのですが、これが想像以上に難しい。特に波のあるところで立つのは非常に難しく、ほとんどの子が最初は膝立ちからのスタートになりました。
立ち上がろうとした瞬間にボードが傾き、落ちる。また上がって、また落ちる。順番にチャレンジしてもらいましたが、落ちること自体が楽しくなってくるあたりが子どものいいところです。
シーカヤックとの違いを、乗り比べて知る
兼松先生は地学だけの方ではありません。シーカヤックの達人でもあります。そして私にとっては、シーカヤックを教えてくれる師であり、友人でもある人です。一緒に外洋を漕いで、無人の浜でキャンプをしたこともあります。
今回はご自身の艇を持ってきてくださったので、子どもたちも乗せてもらうことができました。
実際に乗ってみると、SUPとの違いがはっきり分かります。シーカヤックは風や波に強く、速い速度で進める。座って重心が低く、船体が水を切って進む形なので、少し波があっても安定して直進できます。一方のSUPは立って乗るぶん重心が高く、風にも波にも大きく影響を受けます。
「なんでこっちのほうが速いんだと思う?」という話をしながら乗り比べてもらいました。説明を聞いてから乗るのと、乗ってから説明を聞くのとでは、腑に落ち方がまったく違います。両方乗れたのは、この日の大きな収穫でした。






突堤から、いろんな飛び込み方で
たっぷり遊んで休憩した後は、少しだけ離れた突堤へ移動しました。ここは飛び込みのチャレンジができる場所です。
ただ普通に飛び込むだけでは、子どもたちはすぐに飽きます。そこで、いろいろな飛び込み方を考えて挑戦してもらいました。
- 浮かべたSUPの上に飛び乗って、そのまま立つという高難度の飛び込み
- 浮き輪を海に浮かべ、その輪の中に入る「ホールインワンチャレンジ」
これが大いに盛り上がりました。ホールインワンは、狙って飛んでも意外と入りません。輪が波で動くうえに、飛び込む勢いで水面を叩いてしまうと弾かれます。何度も外して、ようやく成功したときの歓声は、この日いちばん大きかったかもしれません。




宿は福井県立三方青年の家
夕方、宿泊先の福井県立三方青年の家へ。職員の方からオリエンテーションをしていただいた後、男子の部屋と女子の部屋に分かれて入りました。
夕食は、アジのフライ、レンコンの煮物、フルーツ、野菜、お味噌汁。バランスの取れた献立で、非常に美味しくいただきました。キャンプはいつも体操教室Brainとの合同開催で、今回はそこに体育教室SHO-TIMEとNSC Sport Schoolも加わりました。食堂では合同チームでの食事です。



ベッドメイキングも、自分の手で
三方青年の家では、ベッドメイキングは全部自分でやる決まりになっています。
シーツのかけ方、布団の準備の仕方。オリエンテーションで説明を受けて、そこからは自分の力で。家では親御さんがやってくれていることを、自分の手で最後までやりきります。うまく角が合わなくて何度もやり直す子もいましたが、誰も代わってはくれません。
こういう「生活の手順」を体験できるのが、青少年教育施設に泊まる良さだと思っています。決まりのある場所で、決められたやり方に自分を合わせる。これも外に出ないとなかなかできないことです。

その後はお風呂へ。1日中たっぷり遊んだおかげか、風呂から上がるころには眠そうな子も出てきていました。ぐっすり寝てくれたようです。
そういえば、この日の夕暮れがとてもきれいでした。窓の外の湾が、しばらくのあいだ紫色に染まっていました。

【2日目】遊びきって、片付けて、帰る
朝ごはんは、ご飯と卵とハムとマカロニサラダ
2日目の朝食は、ご飯、卵、ハム、マカロニサラダ。しっかり食べて2日目のスタートです。
朝ごはんは子どもの体調を見るいちばんの指標だと思っています。食が進まない子がいれば、その日の動かし方を変えます。この日は問題なし。全員しっかり食べていました。

使ったものを、元どおりに
朝食のあとは片付けです。使った道具、ベッドシーツ、枕カバー、布団のたたみ方。そして自分たちの部屋の掃除も、しっかり自分たちで行いました。
来たときよりきれいにして返す。この時間を大事にしています。楽しいことの後始末までが自分たちの仕事だと知っている子は、次の場所でも頼りにされるからです。
2日目も、海
片付けを終えて、前日と同じ海へ戻りました。この日もSUP、シーカヤック、飛び込みチャレンジです。
そしてこの日やったのが「SUPダッシュ」でした。
SUPを何枚もつなげて海に並べ、じゃり浜から助走をつけて、そのボードの上を渡って走り抜け、最後にジャンプして海へ飛び込む。ただそれだけの遊びなのですが、これがとにかく盛り上がりました。
浮いているボードの上は、当然ながら安定しません。踏み込めば沈むし、勢いが足りなければ途中で落ちます。止まったら終わりで、リズムよく走り抜けるしかない。
これは1日目にはできなかった遊びです。前日たっぷりSUPに乗って、水の上でどう体重をかければ安定するのか、どこを踏めば沈むのかを体が覚えている。その蓄積があるからこそ、少しだけレベルを上げられたわけです。
1日目は「慣れる日」、2日目は「その先に行く日」。1泊するかどうかで、遊びの中身がここまで変わります。

昼食はラーメンとチャーハンでした。

水族館チームと、海遊び継続チーム
午後は、水族館に行くチームと、そのまま海遊びを続けるチームに分かれました。
やりたいことが分かれるのは自然なことなので、無理にどちらかにそろえません。海で遊び足りない子は最後まで海に、生き物を見たい子は水族館に。
そして結果的に、海遊びを選んだチームも早く着替えられたおかげで、少しだけ水族館に行くことができました。段取り良く動けば、その分だけ自分たちの時間が増える。誰かに言われて急ぐのではなく、「早く着替えたら次に行ける」という形で体感できたのは、なかなか良い展開だったと思います。
ただ、こうしてチームを分けられるのは、合同で企画しているからこそです。
指導者がひとりしかいなければ、全員を同じ場所に集めておくしかありません。「水族館に行きたい子は行っていいよ」とは、どう考えても言えないのです。今回のように4団体で組んでいて、目の届く大人が複数いるからこそ、子どもの「やりたい」に合わせて動くことができます。
合同開催というと人数が増えることばかりに目が向きがちですが、本当の利点は、選択肢を用意できるようになることだと思っています。

道の駅で、お小遣いの使い方を考える
帰る前に、道の駅でそれぞれお土産を買いました。
家族に買うもの、自分が欲しいもの。決められたお小遣いの中で、どれをいくつ買うかを、みんな真剣に考えていました。あれもこれもとはいきません。予算という制約があるからこそ、優先順位をつける必要が出てきます。
手元の金額と、欲しいものの値段と、家族の顔を思い浮かべながらの計算。これも立派な学びの時間だと思って眺めていました。
締めくくりは、みかた温泉きららの湯
最後はみかた温泉きららの湯で入浴しました。
2日間たっぷり遊んで、海水と日焼けでひりひりした体に、温泉が本当に気持ちいい。塩を落として、疲れをほぐして、それから帰路につきます。

帰りは約3時間半の長旅でした。車に装備されていたモニターで映画を見ながら、そのうち何人かは眠りについて、鈴鹿へ戻ってきました。この帰りの車の中の疲労感も、私は好きです。遊びきった後にしか出てこない、いい疲れ方でした。
【考えていること】マイクラの世界と、リアルな世界を行き来する
ここからは、このイベントで私が考えていることを書かせてください。
画面越しでは届かないもの
普段はマインクラフトの中で冒険をしている生徒たちが、今回は海という大自然で冒険をしました。
マイクラでもマルチプレイはできますし、友だちと一緒に何かを作る体験そのものは、オンラインでも確かに成立します。ただ、どうしても相手の表情が見えない、声だけのコミュニケーションになることが多い。デジタルの空間で共有できることもたくさんありますが、同じ体験を肌で感じる、全身の五感を使って感じるというところは、やはり何事にも代えがたいのではないかと思っています。
五感で受け取ったもの
この2日間で子どもたちが受け取ったものを、思いつくまま挙げてみます。
- 空の青さ
- 日差しの強さ
- 自分の体がどれぐらい動くのか
- 海から出た後の、あの脱力
- じゃり浜の歩きにくさ
- 海のきれいなところ
- 飛び込む前の不安とドキドキ
- 海水を飲んでしまって、喉がすごく辛くなったこと
- 鼻が痛くなってしまったこと
- ライフジャケットが擦れて痛くなったこと
気持ちのいいことばかりではありません。むしろ後半は、痛いこと、辛いことばかりです。でも、この積み重ねこそが大事だと思っています。
たくさんの体験が積み重なっていくと、「それが自分に合っているか」「自分はそれが好きか」「得意かどうか」に、少しずつ気づいていけるのではないでしょうか。やってみないと、好きかどうかも分かりません。
仲間と同じものを食べる
もうひとつ、いいなと思っているのが仲間たちと同じものを食べることです。
青空の下で食べる、自然の中で食べる。同じ鍋から、同じ献立を、同じタイミングで。これもやはり、何事にも代えがたいものだと思っています。
普段は会わない仲間と
今回はいつもの体操教室Brainに加えて体育教室SHO-TIME・NSC Sport Schoolも一緒だったので、外部のグループとの交流がありました。そこで仲良くなった子もいます。
それだけでなく、プロクラ鈴鹿校の中でも、普段は違う時間帯に通っていて会わない仲間と一緒に遊びました。そこで芽生えた友情があったのは、とても良かったのではないかと思っています。同じ教室に通っていても、曜日と時間が違えば顔を合わせることはありません。こういう機会がないと、一生知り合わないままです。
目指しているサイクル
たくさんの体験と経験をすると、「自分たちのやりたいこと」「こんなことができたらいいな」という想像力が生まれてきます。
そうしたら、それをまたマイクラの中で再現してもらう。想像力を発揮してもらう。
マイクラの世界 ⇄ リアルな世界。この行ったり来たりを何度も繰り返して成長していってくれたら、これほど嬉しいことはありません。
パソコンの前に座っている時間と、海で塩まみれになっている時間は、私の中ではまったく地続きです。どちらか一方だけでは足りない。だからこのイベントを「ゲームじゃないサバイバルモード」と名づけています。ゲームを否定するためではなく、ゲームの外側にも同じくらい面白い世界があると知ってもらうためです。
おわりに
透明な日本海、じゃり浜の石とシーグラス、SUPとシーカヤック、突堤からの飛び込み。そして自分でかけたシーツと、自分で選んだお土産。
2日間で持ち帰ったものは、写真に写っているものだけではないはずです。
たくさんの笑顔をありがとうございました。次の冒険でも、また会いましょう。

スケジュール概要
| 時間帯 | 1日目(8/1) | 2日目(8/2) |
|---|---|---|
| 午前 | 出発・10:30ごろ到着・ラジオ体操・海水浴・石さがし・シーグラスさがし | 朝食・片付け・部屋掃除・海へ(SUP/シーカヤック/飛び込み) |
| 昼 | 昼食(焼きおにぎり・流しそうめん) | 昼食(ラーメン・チャーハン) |
| 午後 | 海水浴・SUP・シーカヤック・突堤で飛び込みチャレンジ | 水族館チーム/海遊び継続チームに分かれて活動 |
| 夕方 | 福井県立三方青年の家へ・オリエンテーション | 道の駅でお土産・みかた温泉きららの湯 |
| 夜 | 夕食・ベッドメイキング・入浴 | 帰路(約3時間半) |
開催概要
- イベント名:ゲームじゃないサバイバルモード 夏の海編
- 日程:2026年8月1日(金)〜2日(土)1泊2日
- 場所:若狭湾(福井県)/宿泊:福井県立三方青年の家
- 共同開催:プロクラ鈴鹿校(HCA白子ベース)/体操教室Brain/体育教室SHO-TIME/NSC Sport School(陸上教室)
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